SDGsと大学運営  ー Nature編集者と若手研究者の対話を聞いて

  昨日はKURAの主催のSpringer Natureの編集者と京都大学の若手研究者のウェビナー座談会を聞いていた。「京大若手研究者x Springer Nature編集長:座談会「学問の挑戦と機会:若手研究者とSDGsを超えた先の未来を見据えて」という長い名前の座談会だった。

https://www.kura.kyoto-u.ac.jp/event/20210324-2/

 まずNature編集者のPhilip Cambell博士から、SpringerがどのようにSDGsのサポートをしているか、SDGsに関わる論文をいかに世界に発信できるか、などの説明のあと、4人の内外の若手研究者が自分の研究内容とSDGsへの貢献可能性を話し、さらに、座談会のなかで、研究が社会にどのようなインパクを与えうるのか、ローカルな研究が評価されるのか、異分野の研究とのデータ共有は可能か、などについて編集者と若手研究者の間での極めて興味ある対話が続いた。

 私も開発経済学を講義していたこともあり、SDGs以前の目標であったMDGsの研究はしていたし、SDGsが2015年に国連総会で合意を得たときまではよくフォローしていたが、この数年はベトナムや日本を動き回っていたので、十分にフォロー出来ていなかった。その間に世界ではSDGsが大きな広がりを見せていた。

 2015年にSDGsを初めてみたときは正直、あまりに目標項目が多く広範で、本当にこれが目標と言えるのか、という印象があったので、十分なフォローもしていなかった。ただこの3年ほどキャリア開発研究という科目で、学生と一緒に多くの会社の営業報告書やCSR報告書を読む中で、SDGsに触れられていることが多いことを知って、SDGsを改めて勉強し始めていたところだ。

 日本語では以下のような本を最近は読んでいる。

・蟹江憲史「SDGs」中公新書

・笹谷秀光「SDGs経営」日本経済新聞出版社

 蟹江氏の本はSDGsそのものの成り立ちなどがよく描かれている。私もSDGsができた当時、目的があまりに拡がりすぎておりなぜだろうかと思っていたが、蟹江氏の本でその意味が分かってきた。彼の本の一節を引いてみよう。

「本書を通じて繰り返し述べてきたのは、SDGsは達成へ向けたルールがなく、到達点が示されているという点である。・・」(同書241ページ)

従って、それぞれの主体(たとえば企業や自治体、あるいは個人)はそれぞれの状況に応じて、SDGsへの貢献を考えていく、自由度が与えられている。目的も多いがそれぞれの状況に応じて目的を選ぶことができる、ということで、なるほどと納得した訳である。もちろん、SDGsの目標も絶対な物でなく、また疑うことも科学であるが。

 笹谷氏の本は企業におけるSDGs利用の意味や方法を極めて具体的に描いている。これも役に立ちそうな本である。私の今の関心は大学運営のなかでのSDGsである。これについてはまた書いていきたい。


コメント

このブログの人気の投稿

Kyoto MIEXは準備中です。ベトナムをまた訪れたいですが。

大学でのコロナ・ワクチン接種

日本人が持つ自国への誇り ーーージェームズ・C・アベグレン「新・日本の経営」を読んで